代表取締役であったXにつき、①会社が管理する予定であった駅ビルのテナント候補会社A社の取締役に就任し、その事実を他の役員や親会社に隠して出店申込みをした、②他の駅ビルの開発事業に関して取締役会に諮ることなく設計請負契約を締結し、多額のリベートをA社関係者に取得させた、という事実関係の下、Xは代表取締役を解職・解任された。 裁判所の判断:正当理由あり 【東京地判平8・8・1商事1435号37頁】 FAX:03-5148-0331. 代表取締役を解任したことに正当の事由があるものという事ができるから、任期満了前の解任を理由とする損害賠償請求も理由がない。 1-4 会社への敵対行為に基づく解任 1-4-1 東京地判平成18年8月30 TEL:03-5148-0330 FAX:03-5148-0331. 代表取締役の解職・解任に関する会社法上の規定や判例について解説します。本稿では会社が取締役会設置会社であることを前提とします。, 解職・解任のいずれも選任者の一方的な意思表示で職務を解くことになりますが、解職と解任では以下のとおりその内容が異なります。, 【解職】解職とは代表取締役から代表権のみを失わせ、平取締役とすることです。この場合、代表取締役は引き続き取締役としての権限を有し、取締役会に出席することもできます。, 【解任】解任とは代表取締役の取締役としての地位を失わせることです。この場合、代表取締役は取締役ではなくなり、会社との委任関係は終了します。同時に代表権もなくなります。, 代表取締役を解職する、すなわち代表権を失わせるのは取締役会の決議によって行います。代表取締役の解職に関する決議事項は、取締役会で通常行われている他の決議事項と同様、出席した取締役の過半数をもって決議します。, 代表取締役を解職する決議において、審議の対象となっている代表取締役は当該決議について特別の利害関係を有すると解されており、議決権を有しません(判例)。また、決議の員数としてもカウントされません。, そのような特別利害関係を有する代表取締役は取締役会において意見を述べることは認められず、出席する権利も有しないと解するのが一般的です。そのため、代表取締役を解職する決議においては審議の対象となっている代表取締役は求めがあれば会議室から退席しなければなりません。当然、当該決議において議長を務めることもできません。もっとも、他の取締役が差し支えないとして認めるのであれば、当該代表取締役は会議室に在室し、発言をすることができます。, 取締役会で代表取締役の解職の決議がなされた場合、ただちにその効力が生じます。対象となる代表取締役への通知は解職の効力発生要件ではありません。もっとも、以後は代表取締役として振る舞うことのないよう、本人に通知しておくべきでしょう。, 取締役会設置会社の場合、代表取締役は必ず選定しなければなりません。前職の代表取締役の解職を決議した取締役会において新たな代表取締役を選定することになります。, 代表取締役が誰であるかということは会社の登記事項とされています。代表取締役を解職し、新たな代表取締役を選定した場合には変更登記を行う必要があります。, 代表取締役の解任は基本的に取締役の解任と同様です。その手続きや留意点についてはこちらの記事(取締役の解任する方法と注意点)をご覧ください。, 代表取締役がオーナー社長であるなど会社の株式の過半数を保有している場合、当該代表取締役を解職することには注意が必要です。過半数を保有する株主は単独で株主総会決議を可決することができます。そのため、株主総会決議を通じて意に沿わない取締役を解任し、新たな取締役を選任することが可能です。, 仮にオーナー社長の反対派がクーデター的に社長を解職させて代表権を奪うことができたとしても、最終的には反対派の取締役は株主総会で解任されて排除されてしまいます。同様に、経営陣が二派に分かれて争っている場合においても最後に物をいうのは株主です。そのような場合には代表取締役の解職によっては問題の解決にはならないことが多いと思われます。, 会社法に関して弁護士に相談することができます。【業務案内】株主・取締役・株式等に関するアドバイス, アドバイスの実績は100社以上。企業・法人の方にビジネスに関する法律サービスを提供しています。, 〒104-0061 取締役を解任する場合に正当な理由が認められた事例や認められなかった事例を紹介します。, 取締役の解任の方法や注意点についてはこちらの記事(取締役を解任する方法と注意点)をご参照ください。, 代表取締役であったXにつき、①会社が管理する予定であった駅ビルのテナント候補会社A社の取締役に就任し、その事実を他の役員や親会社に隠して出店申込みをした、②他の駅ビルの開発事業に関して取締役会に諮ることなく設計請負契約を締結し、多額のリベートをA社関係者に取得させた、という事実関係の下、Xは代表取締役を解職・解任された。, 代表取締役であったXの持病が悪化したので、会社の業務から退き療養に専念するため、保有していた会社の株式全部を別の取締役に譲渡し、代表取締役も交替した。その後、株主総会においてXは解任された。, 監査役Xは、税務当局から否認されることを知りながら、会社の税務処理として価格変動準備金を計上したところ、かかる税務処理は税務当局から否認され、会社は更正処分を受け、延滞金及び重加算税等の支払いを余儀なくされた。会社は税務処理上の過誤を犯したこと等を理由にXを解任した。, 会社の大口販売先に対する代表取締役Yの取引態度に問題があったことから、他の全取締役が会社の将来のためこれを放置することが出来ないと考え、Yの態度改善を要求する旨の書面を作成した。取締役Xがこれを役員会において全取締役を代表して朗読したところ、Yは、これをXが会社を乗っ取ろうとして、Xが中心になってなしたものだと曲解した。YはXの会社への出勤を妨害し、暴力をふるい、さらに株主総会を招集してXを解任した。, 取締役Xについて、①感情の起伏が激しく、また協調性に欠けるところがあるとして、会社内で孤立していた、②入社して以来10年余に亘って会社に勤務してきたものであり、その間取締役に就任するなどしているところに照らせば、Xはむしろその力量を評価せられ、重んじられていたとさえいえる、③Xの性格や行状に、会社内で勤務を継続していくことができない程の特段の問題点があったわけではない、④基本的には真面目で生一本な性格であり、仕事熱心で被告会社に対してもそれなりに貢献するところがあった、⑤それにも拘らず、Xが会社内で顕著に孤立するようになったのは、次第に会社代表者との折合いが悪くなったことに最大の原因がある、という事実関係の下、Xは取締役を解任された。, 代表取締役Xについて、①取締役として通常どおりの職務の遂行が可能であるとは考え難く、職務の遂行に対する意欲も失われていた、②自己の株式取引による損失の穴埋めのための借入金の担保として会社の定期預金を提供し、それについての取締役会の承認があったといえるか疑問であって、商法(当時)に違反する疑いが濃厚である、③株式取引への熱中ぶりは尋常とはいい難く、経営者としての適格性に疑いがある、④多額の株式の信用取引やインパクトローンという投機性の高い取引を独断で行い、結果的に多額の損失を会社に与えたものであって、これは、代表取締役としての経営判断の誤りと評価すべきである、という事実関係の下、Xは取締役を解任された。, 取締役Xについて、会社の取締役に就任したのはボウリング事業を事業として行うためであったところ、同事業の売上はわずかにとどまり、Xにはボウリング事業を展開していくだけの能力がなかった、そのため、会社代表者はボウリング事業から撤退するとの経営判断をした、との事実関係の下、Xは取締役を解任された。(会社代表者との協議の経緯からXによる損害賠償請求は信義則上許されないとも認定されている), 取締役Xについて、不正経理及び社員総会ないし株主総会の不開催があったことを理由に一度取締役を解任され、その後再任された後、取締役の解任の訴えを提起された。, 裁判所の判断:取締役の任期の開始前に生じた発生・判明した事由は、取締役の解任の訴えにおける解任事由に当たらない。 【京都地宮津支判平21.9.25判時2069号150頁】, 取締役Xについて、①株主に事前説明なく株主割当ての方法で新株を発行し、失権株を生じさせ、それによって株主の信頼感を喪失させた、②会社のグループ会社の業務に関して不適切な言動があった、との事実関係の下、Xは取締役を解任された。, 取締役Xについて、①創業者の死亡後、オーナー一族の意向を無視して独断専行の挙に出るようになり、②妻を取締役に就任させ、③代表取締役を解職された後も一族出身の新たな代表取締役に業務の引継ぎをせず、その業務を妨害し、従業員を混乱させ、④これらの結果、Xが取締役として業務を執行するにつき著しく信用を喪失した、との事実関係の下、Xは取締役を解任された。, 取締役Xについて、①自らに対する人事異動の打診行為を批判し、会社や会社代表者の数々の問題点、疑問点を挙げ連ねて会社批判を繰り返し、上記打診がある前にはXには全く見受けられなかったところの被告への敵対行動に出た、②会社の不祥事に関する情報を週刊誌に提供した、③会社や会社代表者の信用は損なわれ、取引及び収益の減少も相当程度生じている、との事実関係の下、Xは取締役を解任された。, 取締役の解任に正当な理由があったか否かは会社の損害賠償責任の有無を決する重要な事項です。正当な理由があることについては会社に立証責任があります。会社としては取締役を解任しようとする場合、どのような事由をもって解任の理由とするか、それをどのように立証するかを慎重に検討する必要があるといえます。本稿で挙げた事例が参考になれば幸いです。, 会社法に関して弁護士に相談することができます。【業務案内】株主・取締役・株式等に関するアドバイス, アドバイスの実績は100社以上。企業・法人の方にビジネスに関する法律サービスを提供しています。, 〒104-0061